文明の向かうべき道
前回までの話の内容をまとめると⋯遠い未来の人類は、アインシュタインの相対性理論による呪縛から逃れられる術、光速突破の方法を見つけ出すも⋯その光年単位の離れた位置まで、ワームホールの出口を生成する装置は、誰がどうやって運ぶの?と言うオチに終わり落胆していることだろう。やはり、宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999、銀河英雄伝説に見るような宇宙オペラは実現し得ないのか⋯うん、残念ながらそうだろう。とりあえず、ヤマト運輸や佐川急便が各営業所に転送装置を設置して会社の存続を図るだろう。しかし、転送装置のダウンサイジングが進み、一般家庭の郵便受けがそれに取って変わられるようになると、宅配便のドライバーは転送装置の保守エンジニアにでも転職するしかなくなるだろう。そんな感じで未来の物流システムに大激変が起きるだろう。
ところで、荷物ではなく人間はどうよ?てな感じで話も進むと思う。ワームホールで人間が安全に通過できる、意識の同一性が担保できる研究、技術開発もかなり進んで行くとは思うが⋯理屈と気持ちは別問題である。昨今のコオロギパウダー問題に見るよう、人々の未知なるものに対する抵抗感は根強い。コオロギはエビと一緒や!お前、エビ食うよな?と言われてもダメな人はダメだろう。それと同じである。誰も「どこでもドア」を使おうとしないだろう。しかし、バイトテロをやらかすようなバカが第一号になってくれるだろう。その詳細は別記事で語る予定だが⋯そんなアホな出来事を契機に、やがては人も普通にワームホールを通る、玄関がどこでもドアになっているのが当たり前の社会に変わって行くことだろう。しかし、これは新たな社会問題の火種にもなりかねない。
とりあえず、意識の同一性と不変性は全体原則として徹底されるだろう。日本工業規格やISOでも定義されるようになると思う。さらに、現実空間に戻って来た時の再現性も重要視されるだろう。ワームホールの入口は量子分解、出口は量子合成となるが⋯前回記事でも指摘した通り、出口の量子合成に手を加えて、イケメンや美女の姿に生まれ変わろうと試みる者は必ず出て来るだろう。いや、量子合成で全身整形!Yes!〇須クリニック!なんてCMが⋯老人だってそれで若い体を欲するようになるだろう。どうせ元は量子分解された自分のものなのだから、それを出口でどう使おうと個人の勝手だろう!と言う主張がまかり通るようになるだろう。社会は大いに混乱すると思う。しかし、それに終止符を打つのが異次元文明への道筋、提言となる。
以上の話は、昔、アメリカの何かのSFコメディ映画であった内容に基づく。個人的に適当に考えたものでもない。うろ覚えなのでタイトルは忘れたが⋯転送装置で頭が前後逆になってしまったおっさんの逸話があった作品だったと思う。それはともかく⋯変身願望は現実空間でなく異次元空間の方で満たしましょう!と言う提言が政府からなされるようになると思う。前回の記事でも書いた通り、異次元空間側であれば問題ない。これにより人々の欲求願望は異次元空間側へ向けられ始めるようになるだろう。もう、いっそのこと異次元空間の中に引きこもり、そこでのみ生活することを考え始める人が現れるのは想像に難くない。それでも、当面の間、現実空間でも体を維持する必要はある。文明が完全に異次元空間の中へ移行し終えるまでの間、最後まで残り続ける切実な課題となる。
前回のグレイの例え話に疑問を感じた人は多いと思う。異次元空間の中に引きこもることができるようになれば、現実の体は不要になるのではないかと⋯もちろん、最終的にはそうなるし、それが文明の究極的な姿となる。しかし、何事も段階と言うものがある。いきなりとは行かないだろう。量子社会の過渡期においては、移動や物を保管する以外を目的とした人間の転送装置の利用は、あらかじめ体と意識の分離して、意識だけを異次元空間の中に送り込むやり方が義務付けられるだろう。再現性を徹底する意図からである。人工幽体離脱による一時的な現実逃避、あるいは、意識の一部だけ異次元空間で働かせながら現実空間での生活も継続するスタイルとなるだろう。そして、多岐にわたる社会システムのすべてが異次元空間に対応し終えるまで、人間の体は妙な進化を遂げるだろう。