白昼夢の出来事に過ぎなかったタルパ戦争

2026.04.13

2010年、オカルト界の片隅で怪しげな実験が行われていた⋯幽体離脱や明晰夢の方面から集まった学生らを中心とするグループにより「夢」の共有実験が行われ続けていた。ただ、当事者らは夢でなく「ダイブ」と呼んでいた。ダイブとは⋯白昼夢を明晰夢化させた技となる。通常の幽体離脱や明晰夢とは異なり、就寝中の偶発性に委ねるのではなく⋯起床中、瞑想により変性意識を極限まで高めることで実現する。白昼にありながら明晰夢を意図的に誘発できるようになるのだ。明晰夢は自由自在なものに思われがちだが⋯それは夢の中での話で、明晰夢自体を見るのは容易ではない。故に革新的な新生技法になると言えよう。経緯は定かでないが⋯従来の「名倉」と区別するため、夢の世界は「ダイブ界」と呼ばれた。とりあえず、ダイブの共有実験の成果を上げていたようだ。

前世紀末、タルパがオカルト雑誌ムーにより取り上げられ、注目を集めた背景、経緯として⋯幽体離脱や明晰夢の方面で研究されていた外部霊体との神秘体験を、思いのまま自由に再現するためにあったようです。自分で理想的な霊体を作り出せるのは魅力的です。

シュレーディンガーの猫

実験はSkypeによる多人数が同時通話できるボイスチャット機能を利用して行われた。おそらく、参加者らはヘッドセットでも装着していたのだろう。実験を主催していた者⋯言わずもがな、浮き草氏の催眠誘導により、深い瞑想状態へ導かれ、全員で同じ夢を見る試みが行われた。もう、数年にもわたり、同氏と関連するエピソードの真実を追い続けて来たが⋯心理学としての「夢」の観点から考察を仕切り直し、この後に起きたとされるミステリアスな事件「タルパ戦争」の考察にケリをつけたい。本稿こそ最終決定版となる。タルパ戦争とは⋯共有された夢の中での出来事となる。夢の中に出現していた一体のタルパを巡り、当時のタルパ界隈でその存在性を問う物議を醸した。果たして⋯件のタルパは存在していたのか?参会者らが話を合わせていただけに過ぎなかったのか?

何のために共有ダイブが考案されたのか?

複数の人が同時に同じ夢を見ることができたとして⋯だから何?と思うことだろう。明確な目的があったはずだ。それは⋯他人のタルパ、他ルパと直接的に意思疎通を図ったり、タルパー同士でタルパの授受を行うことだ。実際、当時のタルパ界隈において⋯浮き草氏と共に活動していたデルタ氏が、共有ダイブを通じて自分のタルパをホロ氏へ譲渡している。しかし、それが後にタルパ界隈を大きく揺るがす大事件の火種と化す。話を急がせるが⋯ホロ氏がデルタ氏から譲り受けたタルパは、すべてデルタ氏の作り話だったのだ。浮き草氏らのこうした活動に疑念を抱き始めたデルタ氏が、共有ダイブの真偽性を確かめるべく仕組んだものであることが後に吐露されたのだ。結果、これを見抜けなかった浮き草氏とホロ氏に批判が集まり、両名のタルパ界隈における信用は失墜した。

タルパ戦争の真相

引き金となった出来事がタルパ戦争と言う訳だが⋯通説では、デルタ氏から譲り受けたホロ氏のタルパが暴走してしまい、浮き草氏とその仲間たちが暴走したタルパを鎮圧すべく、共有ダイブで戦いが繰り広げられたとされる。しかし、どうも⋯そうしたこと自体はなかった模様で、デルタ氏の告白を⋯浮き草氏らが弁明に窮し、何も言い返せない状態となったことをいいことに、オカルト研究家でタルパ界隈を出入りしていたサラシナ氏が脚色、誇張しただけの話に過ぎなかったようだ。某巨大掲示板で語られていた鮫島事件と同じ類の都市伝説に過ぎないようだ。しかし、デルタ氏の告白はタルパ界隈に大きな衝撃と混乱を与え、様々な論争を招き起こした点から、戦争と比喩するに相応しい状況だったとも思う。そりゃ⋯件のタルパは最初からどこにも存在しないと告発されたのだから。

各自の心の中で存在していたタルパ

その後、浮き草氏とホロ氏、その関係者らはタルパ界隈から姿を消した。しかし、タルパ戦争(と言われた出来事)から数年後⋯ホロ氏が弁明のためタルパ界隈に再降臨、サラシナ氏とシニカルな会話を交わす。ホロ氏はその中で⋯共有ダイブは浮き草氏のシナリオに基づくもので、自分たちの中では実際にあった出来事と抗弁している。シナリオとは⋯おそらく、浮き草氏が催眠誘導に使った台本だと思われる。浮き草氏は元々、離脱界隈の住人であったことから、オカルト以前に催眠術には長けていただろう。また、夢占い師である私の立場から言わせて貰えれば⋯タルパは夢の登場人物とまったく同じ原理で動いており、ダイブも夢の一種、白昼夢である以上、タルパは存在していたことになる。夢だから元々が何であれ、浮き草氏らの中では存在していたことになる。

つづく