オカルト小説「タルパ戦争」あらすじ
ごく平凡な大学生であった木口。生まれも育ちも東京で、活動的な上京組と比べると学内では空気のような存在であった。しかし、そんなある日⋯京都出身の浮島と学内で出会う。木口は法学部で浮島は文学部であったが⋯二人が出会った場所は工学部の旧研究棟を再利用したクラブハウスで、浮島が主催する凸都大学オカルト研究会だった。最初はただの興味本位だった⋯木口は付属校からのエスカレーター組でもあり、代わり映えのしない学生生活に刺激を求めて、魅かれるように浮島のところへ近づくこととなる。霊能力はある日突然目覚めるものだ。木口は大学二年生になるまでそれに気づかず、浮島の力により一気に開花することとなる。しかし、それがきっかけとなり⋯後にオカルト界の鮫島事件「タルパ戦争」の当事者になろうとは想像すら及ばなかった。
凸都大学とは
大正時代、ドイツ人牧師であるアマネウス・シャウエッセンにより設立された東京凸学校を前身とし、今年で創立100周年になる伝統私学です。世界に凸れる人材育成、チャレンジングアタックできる高い専門性を建学の精神に掲げ、戦後は凸都大学へ名称変更され現在に至ります。東京の文京区に本部とメインキャンパスがあり、北はつくば市から南は横浜市まで、複数の学部とサブキャンパスから構成され、付属幼稚園から大学院までそろった超マンモス学園になります。18の学部、1つの短大部、2つの専門学校。そして、全国に10ほどの付属小中高学園があります。これ以外にも医学部付属病院が4つほどあり、ないものはないが売りとなっております。政財界にも多く人材を輩出しており、日本一学費の安い私学としても知られ、授業料は学部によっては国立大学より安いです。
二人の主人公、木口と浮島
木口は法学部行政学科の2年で、将来に対する思いも漠然であり、公務員にでもなれれば御の字⋯そのように考えていた。ナイーブで感情表現が苦手であったため、周囲から冷淡な人間に誤解されがちだった。対して、浮島は情熱的な人物で、何事も意欲的に取り組み、オカルト研究以外にもテニスを嗜み、凸都大学テニスサークルの主要選手を打ち負かす程の実力もあった。見た目は爽やかなスポーツ万能青年で、京都にある実家は伝統ある神社であった。将来、神主である父の跡を継ぐべく文学部で宗教学を学んでいた。しかし⋯そんな表のイメージとは裏腹に、浮島は陰陽師、強力な霊能者としての顔も持ち合わせていた。浮島の力により木口は自分の中に眠っていたものが引き出された。そして、木口と浮島の二人は⋯オカルト世界の深淵へ突き進むこととなる。
もう一人の主人公、更梨
タルパ戦争を第三極の視点で語る上で欠くことのできない人物⋯もう一人の主人公が更梨となる。法経大学経済学部の学生で、巨大掲示板「たらばがに」のオカルト板で、ジェイクスなる固定ハンドルネームで活動していた。後に、同掲示板のオカルト板でタルパ戦争が話題となり、一躍注目を集めた木口と浮島らに対して、次第に複雑な思いを抱くようになる。更梨自身も霊能者であるも、幼い頃から陰陽師として英才教育を受けていた浮島とは異なり、座敷わらしに呪われた者と郷里の一族から忌み嫌われ、帰郷を一切許されていなかった。物語の最後まで木口や浮島と直接対面することはなかったが⋯掲示板上で肉迫する様相は、文面からでも過酷な運命を背負った者の気迫が滲みあふれ、後半になると多くの賛同者と支持の声を集める。しかし、最後は皮肉な試練に直面する。
次々と謎の死を遂げる登場人物たち
楽京大学理学部の出井は、凸都大学オカルト研究会の活動に疑問を持ちSNSで木口に接近。思念伝達により自身のタルパを譲渡することを提案する。もちろん、出井はタルパ作成に成功した経験はなく、この時の提案はまったくの作り話となる。木口の霊能力が本物であれば偽物と見破れるはず⋯見破られた場合はすぐに謝罪するつもりであったが⋯話が思わぬ方向に進み、木口の様子をしばらく見てみることにした。そしてとうとう、あのタルパ戦争へ発展して行く。更梨とともに凸都大学オカルト研究会を糾弾すべく動くも、後に自身の犯した過ちに気づき後悔する。木口の力があまりにも強過ぎたため、実は出井の自宅に保管されていた”いわくつき”の品に憑いていた怨霊を呼び覚ましていたのだ。出井をはじめとする関係者に呪いがかかり次々と謎の死を遂げて行く。