お笑い系オカルト夢小説 似非関西弁を話す幼女と潜水艦

投稿日 2023.11.14 更新日 2023.11.14

 先日はこんな夢を見ました⋯⋯

 どうやら、その後の経過は芳しくないようだ。樽楠は険しい表情になりながら男の話を行く。別の何か良い薬を処方しようか⋯⋯そう考えあぐねていた。とりあえず、男の話を最後まで聞いて見る必要がある。

「また、あの島にいました」

「やっぱり⋯⋯例のウサギ人間も現れたの?」

「今度は自衛隊のような戦闘服を着た幼い女の子に拉致されました」

「⋯⋯その後、どうなったの?」

「島の沖合に停泊していた潜水艦の中に連れ込まれました」

 男は両手で頭を抱える姿勢になりながら⋯⋯自身が夢の中で受けた、かなり惨い仕打ちについて打ち明けた。

 座っている椅子の背もたれを前側の状態にして話を聞く樽楠医師⋯⋯診察室でこんな椅子の座り方をする医師はそうそういないだろう。その日は樽楠も疲れていた。とりあえず⋯⋯もう少しだけ強い薬を使い、集中的に治癒させるのが妥当だろうと判断を下した。

 男が見たと言う「夢」とは⋯⋯自分を潜水艦の中へ拉致した幼女は、どうやら、その潜水艦の艦長らしく、部下に恐ろしい命令を発した。自分をSLBMの弾頭に詰め込み、そのまま宇宙に向かって打ち上げると言うものだった。

 恐怖のあまり、飛び起きるように目が覚めたと言う。その日の晩以降⋯⋯一睡も眠ることができず、フラフラの状態でここまでやって来たと言う。前回処方した薬はまったく効いていない様子だった。

「失礼ですが、ご趣味は何ですか?」

「懐中電灯を集めるのが好きでして⋯⋯マグライトとか」

「そうですか⋯⋯素晴らしい趣味をお持ちですね」

「最近はペンライトの改造にもハマり、これからだってところを⋯⋯」

 すでに、樽楠医師はある結論に達した。

 本当の原因は⋯⋯ペンライトの使用目的にあると睨んだ。このままでは、この男の甲斐性がなくなる⋯⋯なんとかせねば。医学部受験を控えた自身の孫も、ナントカ48にハマり、ペンライトの光量を上げる改造に余念がなかった。

「もしかして?アイドルとかに興味あります?」

「はい!自分は!AK⋯⋯」

「はい!わかりました!それ以上お話しなくて結構です。あなたの問題はそれですよね?何か大切なルールを忘れていませんか?」

「大切なルール⋯⋯」

 男は我に返るよう気づいた。

 公式ペンライトが気に入らなかった訳ではなかった。周囲より少しだけ目立ちたかった。お気に入りのあの子の気を引きたかった、あの子に自分を見て貰いたかった。それだけである。しかし、これと粗暴で似非関西弁を話す得体の知れない幼女に潜水艦で拉致された夢と⋯⋯何の関係があるのかと憤った。

 最近、ネット上で知り合った⋯⋯夕菜と言う女子高生からも似たような指摘を受け憤慨していた。もちろん、自分も30歳になる良い大人だ。頭では解ってはいたが⋯⋯気持ちがそれに従わなかったのだ。

 男は意を決して、イマジナリーフレンドの発生原理に関する持論も、ついでに展開して見ることにした。終始、仏面のままでいる樽楠医師。男は無意識に語尾に「的」と付けた学者風の話し方をしてしまっていたからでもある。