変なスピリチュアル小説・ゴン管ぎつねの決意
「ゴンにはもっと広い世界を見て欲しいの⋯⋯」
「玉ちゃん⋯⋯」
「こんなに長い間、束縛しちゃってごめんね⋯⋯ごめんね⋯⋯」
「玉ちゃーーーーん!!!!」
都市公園の大広場で絶叫するゴン。
直後、足のひざがカックンして目が覚める⋯⋯疲労から立った状態のまま眠り込んでいたようだ。周囲の視線がゴンに集まる。
「はっ!!夢か⋯⋯」
時計塔を見ると、時刻はもう間もなく六時になろうとしていた。
執行官を兼ねた公園の管理人がやって来た。
「もうそろそろ時間だ。お勤めご苦労さん。ところで、玉ちゃんって誰?」
直後、赤面するゴン⋯⋯ふと、気がつくと、管理人のおじさんの後ろの方から文磨もやって来た。
「ゴンがお世話になりました」
管理人に深々とお辞儀をする文磨⋯⋯次にゴンの方へ振り向くと、軽めの空手チョップでゴンの頭を叩いた。
「こらっ!ダメじゃないか⋯⋯」
「だって⋯⋯」
「次からは見つからないように上手くやりなさい!」
「うん⋯⋯次は、金ノコでチャレンジングアタックするよ!」
この二人の会話にあきれ顔になる管理人。
文磨は管理人から提示された書類にサインをすると、ゴンを抱き上げて連れ帰ることにした。甘えるよう文磨に寄り添うゴン⋯⋯
「そう言えば、いろんな人から銀貨貰ったよ!かつ丼食べに行こうよ!」
「そうだな⋯吉田家に行くか!」
二人は吉田屋へ行くと、かつ丼の特盛とトッピングにチョコの家を注文することにした。ここは一年中クリスマスの国⋯⋯ガトー公国。牛丼や親子丼、かつ丼の上にだって、ローソクを立てることは珍しくない。
文磨は独身で現在嫁さん募集中の身であったことから、今はゴンとの二人切りの生活となっていた。
吉田屋で仲良くかつ丼を食べる二人⋯⋯
しばらくすると、向かい側の少し離れた席で、片膝をつき笑みを浮かべながらゴンを見つめる美女がいた⋯⋯昼間に会ったあの占い師っぽい女性である。女性と目が合った瞬間、まるで時間が止まったかように周囲の光景が固まる。横の席に座っていた文磨も、カウンター内の店員や周囲の他の客も静止していた。
「えっ、何?」
「ふーん、ゴンって言うだ」
「これは一体どういうこと!?」
「時間をちょっとだけ止めてるわ⋯私とあなただけが会話できるように」
「僕に⋯⋯何の用?」
「玉って女性⋯⋯こちら側の世界に転生して来ているわよ」
「えっ!!」
「知りたかったら、後でここに電話頂戴。じゃ」
直後、通常の光景に戻る⋯
ゴンは驚き文磨の方を見ると、文磨は普通にかつ丼を食べていた。そして、女性は姿を消していた。しばらく、あたりをキョロキョロするゴン⋯⋯自分のトレイを見ると、中に名刺のようなものが置かれているのに気づいた。
「どうした?ゴン」
「ううん、なんでもない」
名刺を自分のポーチの中へしまうと、かつ丼を食べ続けた。
◇ ◇ ◇
次回、自作自演事件の舞台となったウィキスタンについて語る。