文科省推奨!?スピリチュアル小説・ゴン管ぎつね
僕はあの悪い潜水艦を沈めようとしただけだ――
下士官の間から、食べてもあまり美味しくなさそうだと言う意見が大勢を占め、結局、ゴンの身柄はそのまま憲兵隊を経由して警察へ引き渡された。そう⋯⋯停泊中のはまぐりの船体に穴を開けようとした管狐である。
とりあえず、船舶往来妨害・艦船転覆等罪で起訴された。
「被告、ゴンにクリスマスツリーの刑、八時間を言い渡す!」
こうしてゴンは、首都ウィルクスにある中央公園で、クリスマスの飾り付けをさせられ、クリスマスツリーとして直立不動の姿勢を強いられることとなる。その間、通行人との会話も一切禁じられている。
ただ、ひたすら⋯⋯クリスマスツリーとしての役目を果たさなければならない。刑の執行は朝九時から行われ、途中、一時間の休憩時間を挟んで、夕方の六時までやり続けなければなかった。
公園の管理人に⋯⋯これが一番マシで楽な姿勢だとアドバイスされ、イヤミ氏のあのポーズを取り続けた。普通に立っていた方が楽に思えるが、奇をてらった方が良いと強く推奨される。
しかし⋯⋯
あとで冗談だと告白される。
ひたすらクリスマスツリーになり切るゴン⋯⋯そこで一人の子供が近寄って来た。オレンジ色の髪をした女の子だった。
「わぁ、パパ!!見てみて!!キツネさんのクリスマスツリーだよ!!」
「よしなさい。リンティア。そのキツネさんにかまっちゃダメだ」
女の子は少ししょんぼりするも、ゴンの頭を優しく撫でてその場からすぐに離れた。しかし、今度は女の子の父親と思しき人物が近寄り、そっと何かをゴンの頭の上に載せた。一枚のガ島銀貨だった。
「勤めを果し終えたら、それでかつ丼でも食べに行きなさい。じゃ」
「パパァ!!早くぅ!!」
どうやら、この親子はこれから買い物かどこかへ向かう予定らしい。女の子に手を強く引っ張られて、人ごみの中へ消えて行った。
時刻はまだ⋯⋯午後の三時であった。
ゴンは公園内に聳え立つ時計塔をチラ見する⋯⋯
「あと、三時間かぁ⋯⋯」
ゴンの目の前に多くの人々が行き交う。すると、今度は一人のロングヘアの美女が目の前に現れた。何やら占い師のような風貌を漂わせていた。ゴンの目の前にしゃがみ込むと、ニンマリとした笑顔でゴンの目を見つめる。
その直後⋯⋯
ゴンは金縛りにでもあったかのような感覚に陥る。両目の瞳が小刻みに震え始め、気が付くとウユニ塩湖のような風景の中に立っていた。もちろん、クリスマスツリーとしてではあるが⋯⋯
「ふーん、君、管狐の妖精なんだ⋯⋯飼い主いるの?」
「飼い主ぃい?失礼だよ!!僕のご主人(マスター)は偉い人なんだ!!」
「いや何。私の旅に同行してくれる使い魔が欲しくてね」
「僕は嫌だよ。今のご主人が好きなんだ!」
「ふーん」
次の瞬間、金縛り状態から解放され、気がつくと美女は目の前から姿を消していた。そして、口の中に銀貨が一枚差し込まれていた。
◇ ◇ ◇
まぁ、次回続く⋯ウィキスタン共和国の話は、ちょっとお預け。