オカルト小説「Re:タルパ戦争」座敷わらしとの再会

投稿日 2023.09.19 更新日 2023.09.20
PhotoAC

霊能力に目覚めた木口。どういう訳か⋯同時に、幼い頃に一緒に遊んで過ごしていたイマジナリーフレンドも、この歳になり再び現れて来るようになったのだ。あの頃とぜんぜん変わっておらず、彼女との再会に涙を流しながら喜ぶ木口。しかし、次第に彼女に対して違和感を覚え始め浮島に相談する。結果、彼女の正体はイマジナリーフレンドではなかった!!木口に憑いていた座敷わらしだったのだ。通常、座敷わらしは家に憑く⋯しかし、まれに異性の人間に憑いて、一生、束縛してしまうことがある。大学に入学してから、積極的に合コンへ出るなど、自分なりに頑張っていたのだが⋯彼女がぜんぜんできない理由がこれで判明した。人付き合いが苦手であったため、そんな自分に原因があるのだろう⋯木口はてっきりそう思い込んでいた。複雑な心境になる木口。

金運に恵まれた男

将来、結婚ができないのか?悩む木口⋯もちろん、悪いことばかりでもなかったようだ。木口はどういう訳か経済的には豊かな生活をしていた。去年には宝くじに高額当選しており、スカイラインの最上級モデルも乗り回していたのだ。とりあえず、今は目の前の彼女を大切にすることに決めた。もちろん、結婚はできなくても良いから一生金持ちがいい⋯そんな安直な考えからではない。純粋に彼女を思ってのことだ。とりあえず、奇妙な二人暮らしが始まった。木口は郊外の自宅から通学していたのだが⋯木口の父親は商社マンで、現在は母親や妹らと一緒にニューヨークへ赴任であったのだ。5LDKもの広さのある自宅は、木口と座敷わらしの共同生活の場と化した。そんな感じで木口のオカルトライフがスタートとした。近々、浮島の誘いによりある実験にも参加する予定だ。

座敷わらしに取り憑かれた男の決意

浮島と出会い、オカルト研究会に入部してから⋯木口の生活は激変した。充実した日々へと変わった。将来、結婚はできないかもしれないが、一生、金に困ることもない⋯まぁ、何より、座敷わらしは愛らしい女の子だし「ま、いっか」と前向きに考えるようになった。自分の娘だと思えば他に何も不足はない。こうして、去年までと違う夏休みへ突入する。とりあえず、浮島の企画する実験⋯それは、思念伝達と呼ばれる霊感の一種を利用して、離れた距離にある人間同士で意識の共有ができないか検証する実験らしい。まだ詳しい説明は受けていなかったが⋯霊感と言うより、イメージ的には千里眼の持ち主と呼ばれた超能力者、御船千鶴子の遠視、透視能力の類似実験かに思われた。このため、大学のサークル部屋へ集合する必要はなく、各自、自宅で待機するよう指示された。

計画されたオカルト実験

どうやら、今回の実験は大々的に行われるようだ。巨大掲示板「たらばがに」のオカルト板でも話題となり、浮島の書き込みによる宣伝も積極的になされていた。結果、他大学のオカルト研究会も参画する運びとなり、合計10名で同時に実施されることとなった。それにしても、実験の詳細な手順、説明のようなものが一切ない。浮島によると⋯先入観が生まれると失敗する確率が高まるため、あえて当日まで詳しく説明しない方針を明らかにした。とりあえず、凸都大学、法経大学、楽京大学の三大学学生らによる一大共同プロジェクトへと話が膨らんだ。実験を前日に控えた木口は、座敷わらしと一緒にドライブへ出かけた。気づいたら、座敷わらしは木口のことを「お父さん」と呼ぶようになっていた。座敷わらしが言うには、自分を認知してくれる女性となら結婚を許すそうだ。

座敷わらし合コン大作戦

木口は思った⋯そうか、それならば霊能者の女性を探せばいいんだ!!善は急げである。手始めに今回の実験を通じて知り合いになれそうな女性を探す。楽京大学理学部の「たっくん」なるハンドルネームの女性がいることに気づいた。字面から男性を思わせるが性別を見ると女性である⋯しかし、たっくんが妙に気になる。ドルヲタだろうか?しかも理学部である。理系の女性はちょっと⋯いや、なんでもない。次に法経大学経済学部の「デノレタ」と言うハンドルネームの女性である。うん、後者に脈あり!!木口はちょっと興奮する。気分はもう⋯オカルト実験ではなく合コンに参加する気まんまんなアレである。運転席でそんな妄想に浸る。隣の座席で座敷わらしがふくれっ面で木口の顔を睨む。それに気づき笑う木口。夕暮れの首都高を少しふらつきながらかっ飛ばす。